18〜eighteen〜
あの人は全てわかっていた。わかっていてくれた。
私の気持ちを真剣に聞き入れて、ちゃんと答えてくれた。
その答えは納得のいくものだった。
あの人は、人の悲しみやつらさがわかる人。だから、
私が傷つかないように配慮してくれた。
私はそれに応えなければならない。 いつまでも想い続けてはいけないのだ。
あの人を忘れようと思う。
それでも、これから私の心には特別な、大切な存在として残るだろう。
いつか思い出として笑いあえる日がくるのだろうか。
一緒に飲みながら語りあえる日がくるのだろうか。
そんな日が訪れるのだろうか。
恋愛抜きのつきあいをできる時が…。
私はあの人を忘れようと思う。
この物語を書き終わるまでに。
私が始めた恋愛は、私自身で終わらせなければならない。
そうしなければ、きっといつまでもひきずってしまう。
一つの恋愛を乗り越えた時、私の中で何かが変化すると思うから。
成長した自分に出会えると思うから。
私は勉強が苦手だった。特に英語。
理解しているつもりなのに、いざとなると問題が解けない。
なかば、投げやりになっていたのかもしれない。
それでも、私が英語を…いや英語だけでなく受験勉強を頑張ろうと
思えたのは、ある人に出会ったからだと思う。
それは塾で出会った一人の講師。
私が惹かれ続けた人である。
私の壊滅的な学力を救ってくれた。
もし先生に会わなければ、私は受験勉強を乗りきれなかったと思う。
といっても、先生のことで勉強が手につかなくなった時もあった。
そんな時は、なんでこんなに先生のこと気になっているのかと、自分を責めたりもした。
それでも、先生の存在があったから勉強を頑張れた部分があったのも事実である。
私は迷いながらも、気がつくと先生に恋愛感情をもつようになっていた。
先生からすれば私は生徒の中の一人。
私にとっても英語の先生。
私に対して恋愛感情はもてない。…そんなことわかっていた。
でも気持ちはとめられなかった。
私の生活は、先生中心であった。
朝起きてから、夜寝るまで。 ずっと考えていた。
でも私が恋しているのは『先生』という面だけであって、
先生の『一人の男性』という面は何も知らない。
少しでも何か知りたくて…行動を起こした。
事の始まりは8月。本当に最後の日だった。
私は友達と二人でお祭りに行き、ひとまわりしてからラムネを買い、一息ついた。
いつものように、話題は先生のことになった。自然と話してしまうのだ。
友達はちゃんと聞いてくれた。そしてこんなことを言った。
「メール、送ってみよっか?」
実はこの前の授業中、先生がHPをつくっているという話をしていた。
私はパソコンをもっていなかったので、そのHPを見ることはできなかったが、
携帯からでもBBSとエッセイが見れるアドレスを別の友達が
教えてくれていた。
それで、携帯からメールを送ってみようか?という提案であった。
「やってみようか?」
私は思わずそう言った。
ばれるかもしれないという恐怖心より、好奇心の方が勝ったのだ。
それと、私の方ばかり悩まされている気がして、「ちょっとくらい」という
カルイ復讐心のようなものがあった。
私の携帯から送ることになり、混乱状態の私に変わって、
友達がメールを打ってくれた。
自分についての自己紹介を少しした。まるで初対面であるかのように、
リンクから飛んできたということにしておいた。
エッセイに関する感想もかいた。
名前は『YU−NA』とした。
「これでいいかな?」
友達が私にメールを見せてきた。
頭が真っ白な私は、静かに頷いた。
そして、携帯を友達に手渡した。
友達は携帯を受け取り、最後に
『HPの管理は大変だと思いますが、頑張ってください。またきますね。』
と付け加えた。
「ばれるかな?」
「ばれないでしょ」
返された携帯を、私は少し力の入らない手でにぎった。
「いくよ」
私は意を決して、送信のボタンを押した。
メールは送信された。
変な達成感と緊張感が私の中で入り混じっていた。
そして不安がこみあげてきた。
メールは送られてしまった…。
停留所でバスがくるまで、友達が一緒に待っていてくれた。
その間、私はいろいろなことを考えてしまって、頭が混乱していた。
もし返事がきたらどうしようか。返信するべきかしないべきか。
メールのやりとりが始まるのかどうか。
でも、結局は返事がこなければ心配無用なものであった。
そうしているうちにバスがきた。
「返事、くるといいね」
そう言って友達は私がバスに乗るのを見届けた。
私は友達に別れを告げてからバスに乗り、席に座って一息ついた。
頭の中で、自分のしたことがまだ理解されていなかった。
絡み合った糸を一つずつ丁寧にときほぐすように、ゆっくりと理解するように努めた。
だんだん気持ちが落ち着くにつれて、笑いがこみあげてきた。
自分はこの夏で一番面白いことをやってのけたと嬉しくなり、おかしくなった。
バスの中にいる人の少なさと、窓から見える夜の景色が一層
私の気持ちを乱れさせた。