18〜eighteen〜
その日の夜、私は先生にメールした。
『正体を明かそうと思うのですが。
私はちゃんと直接言いたいのですが、先生はどうですか?』
というような内容のメールを。
夜中に先生から返事がきた。
『正体は明かさなくても結構です』
その一言に、私の頭の中は真っ白になった。
メールのやりとりを始めた頃、
先生はYU−NAの正体を気にしていた。
だからこんなことを言われるとは、あまり考えていなかった。
やっぱり、正体が誰かとわかっているから?
私だとわかっているから?
『もし正体を明かしてくれるのであれば、
メールにしてください』
先生は私に直接謝ることはおろか、
告白することも拒否した。
きっと私が正体を明かせば、告白することもわかっているはず…
メールしてくださいというのは、
そのどちらもしないでくれということ。
先生にとって、その二つは迷惑なんだと思った。
それなら私の気持ちを押し殺して、なかったことにしよう…そう思った。
思ったけど、それは絶対に後悔する終わり方だった。
正体を明かさなくて結構ですと言われて、ハイそうですかとひきさがり、
このまま何事もなかったようにメールをする。
そんなのつらすぎる。
今言わなくても、きっといつか言ってしまう。
はっきりしないでひきずるより、
ちゃんと言ってはっきりさせよう。
先生が拒否しているのをわかっていつつ、
ふられるのもわかっていつつ、正体を明かし、
私の気持ちを伝えられる限りメールで伝えた。
先生にメールするのに協力してくれた友達のことも。
うそをついてお互い初対面であるかのようにメールしてまったことも謝った。
『今まで先生のことを考えないで、いろんなことをしてしまってごめんなさい。
煙草を吸ってる時に話しに行ったり、掃除をしたり、
さらにメールまでも。本当に迷惑だったと思います。
でも私は先生に惹かれていました。
この気持ちは憧れなのかと思っていました。
結局、私は「先生」という面しか見ていなかったのですから。
だから他の面もちゃんと知りたくて、メールしたわけです。
先生の言動には、何度も悩まされてきましたが、
先生と話したり、一緒にいた時間は私にとってすごいやすらぎで、
私にとってとても大きな存在でした。
以前、私は気になる人への気持ちがうやむやになっているとかきましたが、
今ははっきりとわかります。
私は先生が好きです。
こんなカタチじゃ淡白すぎて、
私の伝えたい気持ちなんて少しも伝わらないと思いますが。
これまで迷惑ばかりかけて、ごめんなさい』
真夜中に布団の中で、先生からのメールを読んでいた。
全てが闇に包まれていた。
メールで先生は謝っていた。
『昨日のメールで正体を明かさなくてもよいといったのは、
もちろん誰だか気づいていたからです。』
最初はわからなかったけれど、
推薦が落ちたあたりからそうではないかと思っていたらしい。
さらに正体を明かされたらこのようになることも、何となく感づいていた。
私の気持ちを受け止めてあげることができない理由は2つ。
一つは、私が生徒であること。
もう一つは、今は彼女がいる。よりを戻したそうだ。
なんとなくそんな予感はしていたけど…当たってほしくなかった。
先生は全部わかっていた。全部わかっててくれた。
私がYU−NAであること。私が考えていたこと。
私が先生を好きだったこと。
私は真剣に告白して、先生はそれに真剣に応えてくれた。
だからメールを読んで、私はすごく納得できた。
先生にふられたら世界が終わって、
一年想い続けてきたのが無駄になって、
すごくすごく恨むんだと思ってた。
でも、違ってた。
一年想い続けてきたというのは私の成長に繋がり、
一人の人を想い続けてきたという充実感を得ることができた。
それは単なる自己満足にすぎないかもしれないが、
私はこの気持ちを誇りに思いたい。
今、こうして生きている。
人の気持ちはとても不思議。
ふられたのにつらくない。少しもといったらウソだけど。
気持ちは穏やかだ。
こうなることは覚悟していたからかもしれない。
私は全てを伝えた。伝えきれない部分とかあると思うけど、
それでも先生はわかってくれた。
私が傷つかないように配慮してくれた。
あの人にとって私が必要でないならば、それで構わない。
私はこの想いを忘れなければいけない。
それはたぶん、ものすごく時間のかかることだと思うけど。
一年以上も想い続けてきたんだもの、
簡単に消せるわけがない。
逆に簡単に消せたのなら、その程度だったということ。
たとえ忘れたとしても、私の中で特別な、大切な存在として残るだろう。
正直に言ってしまえば、これで終わらせたくないというのがある。
でもいくらこれで終わってほしくないとこっちが思っていても、
先生にその気がないなら仕方がない。
結局、あの人が何を考えていたのか何一つわからなかった。
私の気持ちが十分に伝わったとメールに書いていたけれど、
いまいち信用できないという部分もある。
しかもメールの正体も私の気持ちにも気づいていたくせに、
あの接し方はナシでしょ?とか思う。
日が経つにつれて、冷静になるにつれて、
いろいろな考えがうかんできてしまう。
もう無駄だとわかっているのに…
気持ちを整理しなければいけないのに、悲しくて切ない。
でも先生に出会えたことは、後悔していない。
むしろ良かったと思う。
先生から影響されることがいろいろあって、
私自身がなにかしら変化できたのは確かだと思う。
一昨年の夏頃。初めて先生に出会って、
ふられるまでずっとずっと想ってきた。
今まで本当に長かった。…ほんとうに。
でもいつまでもひきずっていてはいけない。
真夜中に待っていたメール。
先生に会う度に幸せだった一時。
先生を想う度にとまらなかった胸の痛み。
何度も流した涙。
私がこの恋にささげた全てに終わりを告げる。
好きで好きでどうしよもなかった。
今、私は先生にお別れを。
最初で最後のお別れを。