18〜eighteen〜
推薦は見事に落ちた。
面接が自分的にうまくいかなかったから、無理だろうなと予想はしていた。
それでも、もしかしたら…という期待は捨てきれなかった。
その日、私は人に会う度に泣きついた。
どうしても行きたかった大学、どうしても行きたかった学科。
そして、私が推薦を受けるにあたって協力してくれた人たち…
その人たちのことを考えると、自分が至らなかったばっかりにと、
本当に申し訳なかった。
それにもし推薦に受かっていたら、受験も終わるということになる。
そしたら私は先生に想いを告げようと思っていた。
それができなくなってしまった。
でも落ち込むだけ落ち込んで、
周囲からあたたかく励ましてもらったおかげで、
私の中では一般受験に切りかわっていた。
うだうだ悩んでも、落ちたという事実は変わらない。
それなら落ちたことをバネにして、一般受験に向けて頑張ろうと。
私は新たな決意のもと、再び歩きだした。
その日の夜、先生にメールしようとした時、一つ迷うことがあった。
推薦が落ちてしまったことを言うべきか、言わないべきか。
もちろん友達には止められた。
そんなことを言ったら、いくらなんでもばれる。
でも…私はべつにそれでも良かった。
私が気持ちを伝えられなくなったかわりに、
せめてYU−NAというのが私であることに気付いてほしかった。
推薦のことで落ち込んでしまった自分に、何かしたかった。
私は意を決して推薦を受けてしたことを話し、
さらに落ちてしまったことをメールした。
送信する時、ボタンを押す指が震えていた。
不安や緊張や期待。いろんな気持ちが混ざっていた。
先生からは普通に返事がきた。
この時期に受験生が落ち込むといったら推薦しかないと考えていたらしく、
私が落ち込んでいる理由が推薦であることを、
なんとなく察していたらしい。
元々落ち込んでいた理由は違っていたが、
とりあえず、先生に推薦が落ちたことをメールで話して良かったと思った。
先生からのメールで、私自身がすごく励まされたからだ。
しかし、問題は月曜日だった。
月曜日に塾で先生に会って、推薦に落ちたことを報告したら、
どう反応して、どう思うのだろう?
メールとのことを何か感づくのではないか…?
どちらにしても、こちらが普通にしていれば、
別に怪しまれないかな?と思っていた。
あまり考えすぎると逆に態度にでてしまうので、深く考えないことにした。
「先生、推薦に落ちちゃった」
そう報告すると、先生は残念がってくれた。
「もっと落ち込んでるかと思った」
と先生は言った。
「もう、いろんな人に励ましてもらったしね」
私は明るく答えた。
「結局、大学に見に行ったの?」
「ううん、郵送の方が早かったからそっちを見た」
「え…それって金曜日?」
先生にそう聞かれた時、一瞬ドキッとした。
私は動揺を隠すように答えた。
「土曜だけど?だって金曜は私、普通だったでしょ?」
「あ、そっか」
先生は、なんとなく納得していた。
YU−NAがメールで落ち込んだのは金曜日。
その原因は、推薦のことだと先生は思っている。
「金曜日?」と聞いたのは、もしかして私をYU−NAだと疑っている…?
今まで、私はぼろをだしてしまったことがあった。
何度もばれたと内心ひやひやしてきた。そして今回のことも。
私をYU−NAだと疑ってくれるのはなんとなく嬉しいけれど、
先生はどう思ったのだろう…?
私がもしかしてYU−NAかもしれないと気付き始めている?
それをどう感じているのだろう…?
でも、今何を考えても結論には達しない。
どうにもこうにも受験が終わらなければ、何もわからない。
それならいっそ、受験に集中しよう。
それ以来、私は勉強に集中した。
推薦に費やした時間分の遅れを取り戻そうと、私は必死になっていた。
先生のことを考える余裕もなくなった。
勉強も、先生とのメールも順調に続いていた。
全てが調子良くいっていた。
そう…その良い状態がずっと続いていくハズだった。
けど、世の中そう甘くはなかった。
推薦に落ちてから、一週間くらいたったある日のことだった。
いつものように私は夜、先生からのメールを読んでいた。
すると、最近先生自身にちょっとした変化があったことが書かれていた。
明日の日曜に誘われたので、出かけるという。
その誘ってきたという相手は、先生の元彼女だった。
しかも、先週も一緒に出かけていたらしい。
もし向こうからやり直そう的な話をもちかけられてきたら、
少し考えてしまいます。断る理由がありませんから。
先生はメールの中でそう書いていた。
私は何を言われているのか、わからなかった。
それは、一体何を意味しているの?
私は携帯を持ったまま、無意識に布団の中に入った。
すると自然に涙が頬をつたった。
よく漫画などで、涙が勝手に流れだして止まらないという場面がある。
そんなことまさか本当にありえないと思っていたが、
その時の私はまさに同じ状態だった。
悲しいから、悲しいと思うから泣いてるんじゃない。
頭の中で考えるよりも、感情が先走りしていた。
涙が止まらなかった。
先生はまだ元彼女が好きなんだ。
認めたくないその事実が、頭の中にすんなり入ってきてしまった。
私の中で「どうして?」という疑問が、何度も何度も投げかけられた。
私はずっと先生のことをこんなに想っているのに…どうして?
答えは返ってこなかった。
そして、痛いくらいに思い知らされてしまった。
私は先生が好きだということを。
胸がしめつけられた。
どうすることもできないのがもどかしかった。
先生の心は元彼女に向いている。
YU−NAでも、私でもなく…。
その晩、涙が止まることはなかった。
悪夢にうなされるように、私は浅い眠りについた。